梅干しを漬ける人々~セルプちくほの場合~

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福岡県飯塚市にある「セルプちくほ」は、障がい者の社会的自立を目指す施設。ここの手作り食品や雑貨は福岡市内のショップやイベントでも人気が高く、中でも梅干しもロングセラー商品のひとつです。今回お話を伺ったのは勤続26年のベテランスタッフの林利美さん。梅干し作りのリーダーでもあります。同じくスタッフの城谷明彦さんも同席くださいました。

 

-さっそく作り方を教えてください。

 

林さん)梅は5月終わりくらいから始めるっちゃなかったかね。最初は水に浸けて、アク抜き。ぶくぶくしてきて、ある程度ぶくぶくがでないようになってからあげる。3日くらいかな。梅の具合によってもちがうけど。

 

水気取って、ヘタ取って。たるに梅、塩、梅、塩って入れていってね。

 

梅1升に塩1合。(塩分は)10パーセントもないと思います。焼酎も使いません。

 

重石は同量くらいにして、だんだん減らしてく。普通よりだいぶ少ないでしょ。

それでも下のほうがつぶれちゃうね。

 

南高(南高梅のこと)が一番難しい。重しを乗せ過ぎたらつぶれる。柔らかいから。乗せなければ梅汁(梅酢のこと)が上がってこない。

 

カビ防止のためにはね。シソを洗うでしょ、それから、よく絞ることですね。キレイに水分を飛ばしておくことが大事。アミの上に干してますね。水気が入るとすぐにカビが生えよる。

 

シソは洗ってあくる日、水気がなくなったところで塩もみ。シソの時は塩(の量)は適当。勘でババっと入れて、アク絞りは2回。シソは塩もみして冷蔵庫に入れといて、まとまったら漬け込む。

 

梅に対してのシソの量?考えたことないですね。適当かね。よく染まるシソを入れたら、少しでも染まる。シソによるね。でも南高はキレイに染まりますよ。果肉が柔らかいからね。

 

(近くで作業されていた女性スタッフの方)あの人の適当はそのへんの人の適当と違うからね(笑)経験が違うもの。

 

-梅は皆さんでちぎっているんですか?

 

林さん)今、梅はほとんど買ってます。このあたりも生えてるんだけど、味はよくてもブツブツが出ちゃったり、見かけが悪いきに、南高を買ってくる。商品ってなったら、見かけ悪いとダメでしょ。南高は果肉がふっくらしてるからおいしくできる。初めから柔らかいからね。

 

うちは干さないけど、漬けた後、天気のいい日は外に出してますよ。たるのままフタあけて。日光に当ててあげるのね。こうすると色がきれいに出る。1週間~10日くらいかな。

 

できあがった梅干しは、昔はプラスティックの入れ物に入れて売ってたけど、今は真空パックにした。このほうがいいみたいだね。これにしてから売れるようになった気がする。

 

城谷さん)去年は300キロ浸けたけど、あっという間になくなったね。7月の終わりから8月くらいに発売をスタートして、半年もたたないうちに売り切れるね。西新のプラリバ(ショッピングモール)のフェスティバルに毎年出店していて、リピーターの方がまとめ買いされたりもする。

 

(女性スタッフの方)うちの梅干しは香りがいいでしょ。梅干し作りはもう10年くらいになりますかね。その前はなかったっけか。最初は地元のおばあちゃんたちに教えてもらったりして。林さんの奥さんにも教えてもらったりしてね。

 

梅は少人数でやらないとだめだね。せいぜい3人だね。ばーっと(大人数で)入ったらもうだめだね。気配りが届かない。わかっちょう人(わかってる人)がやればいいけどね。わからん人にやらせると、もうね…。全くしたことない、初めてするって人だとちょっとした加減がわからない。絞るって言っても微妙な加減があるでしょ。だから毎年同じメンバーでやってる。

 

林さん)初めは150キロぐらいだっちゃね。

 

城谷さん)最初は地域とか施設に関係してるの方に贈るために味噌とかを詰め合わせにしたら評判よくてね。お歳暮みたいな感じね。それでだんだん売れるようになっから、作る量も増やしてったんじゃないかな。

 

梅干しはイベントにも出してるけれど、ショップとかスーパーとか、近くのハローデイ(注:福岡県を中心に広がるスーパーマーケットチェーン)とかね。

 

林さん)冷蔵庫も増えたからね。梅はストックできるきにね。

 

城谷さん)梅とらっきょは同じ所に置いちゃいけないとですよ。販売しよってもお客様に言われますよ。なんかあるんでしょうね、言い伝えが。同じ冷蔵庫、同じ部屋に置いてもだめなんですよ。年配の方はパックしてあってもダメって言うよ。「アンタこんなことも知らんとね」って。

 

林さん)値段は150gで250円。安いですかね。でもこういう地域だと当たり前の値段。高いのは買えんもん。地域柄、自分で作るのは珍しくない。三越、岩田屋(福岡県にあるデパート)に来るようなお客様はこだわるから案外自分で漬けてたりするし。販売する場所によりますね。本当にこだわる人は自分で作りますからね。

 

気に行ってくれた人は一人で10袋とか買ってくのね。

万人受けする味かっちゅうたら、しないんだけど、気に入ってくれる人はいるね。

いつも決まって買ってくれるお客さんも多いね。

 

-梅干しを作り始めた理由を教えてください。

 

林さん)梅干しを始めたのは、自然を生かしたリサイクル商品としか思ってないですよ(笑)原価をかけずに作れると思ってたんだけど。すぐそこの山に何でもいっぱいあるからね。でも今は買ってるけどね。

 

まあでも、うちは梅を買うとこが友達だからね、相当安くしてくれてるとですよ。

シソも買ってます。シソも安いっちゃ。地元の農家さんからですね。

塩は、普通の塩、普通の食塩です。25キロ入った、でかいパックのね。

 

-梅干し以外にはどんなものを作っていますか?

 

林さん)うちは多品種で小ロットなんですよ。じゃがいもとかたまねぎとかも何百キロと作ってて、そういうのも売るし。食べ物だけじゃなくて、工芸品も作ってるし、何でもあるね。

 

城谷さん)たくあんやかぶ、青高菜とか、漬物だけで5種類。筍は掘って、干し筍とか塩漬け作ったりね。筍が終わったら、らっきょに梅に、次は栗。味噌もあるし、お菓子もあるし。冬はアラレ餅にかき餅。餅を作る年もある。白と黒豆入りと青海苔の3色にして真空パックにしたり。なんてやってると1年たちますね。

 

林さん)切干大根もおいしいよ。うちのは手もみするとですよ。普通のはまっしろしろでしょうが。うちの切干は手もみするからこんなに黄色いとですよ。(もむことで)甘味も出て、歯応えもあって、旨味もあるから、もうぜんっぜん違いますよ。このままおやつに食べる人もいる。手間ひまかけないとね。食べたらすぐにわかるよ。時間がたったら、大根の糖が出てきて黒っぽくなるとですよ。でも水に戻したら白く戻るんです。

 

梅干し作りに特別な感じ?何にもないない(笑)

結構追われるんですよ、次々。一日中梅干しをやるわけじゃないからね。ジャムやったり漬物したり。作るだけじゃなくて、毎日介助の仕事もあるし。この時間までに終わらせなきゃってのがあるからね。

 

あとは畑で大根やら白菜作ったり、米も作るし。切干大根の干す台も作るし、ワクも手作りよ。こんなん買ったら高いじゃないですか。だから作ったの。

 

農作物は出来不出来もあるし、時期もその年によって色々違うし、本当に毎日色々あるから、全部いつでも行き当たりばったりやね。

 

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↑人気商品の数々。どれも素朴なおいしさ!ファンが多いのも納得です

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↑取材時はたくあん用に大根がズラリと干されていました

 

【セルプちくほさんの梅干し】

すっきりさっぱり。セルプちくほの梅干しは梅の自然な甘さと香りが残る爽やかな仕上がりです。柔らかくふんわり。今期の分はもう売り切れですが、残っていた「つぶれ梅」(つぶれてしまったため、商品にはできなかった梅干し)を味見させていただきました。

 

2014年3月取材