2013/10/07

梅干しを作る人々 その5 ~美保さんの場合

美保さんには小学生のお子さんが2人。お話を聞いていると、手作りを大切にした食生活や丁寧な暮らしている様子が伝わってきます。お子さんたちもそれを受け継ぎ、すでにお料理がかなりできるのだそうです。

 

 

―ご実家に梅の木があるんですよね?

 

実家は福岡県豊前なんですけど、家に梅林があるので、母は梅干しをずっと漬けてます。木は20本弱くらいかな、普通に植えてあるだけなんです。何にもしていないので無農薬です。ただ、上のほうに枝が伸びると脚立がないと実が取れなくなるから、枝が横に広がるように、何年かに一回くらいは枝を切ってあげるのと、梅ちぎりの前にヘビなどがいると困るので、草刈りはしようかなというくらい。

 

私も子供も行ける時は収穫に行くし、行けなくても梅を段ボールでドーンと送ってくるので、じゃあ作ろうかと作っています。

梅はできるだけ熟した状態で収穫するんです。お店だと、まだ青い状態で売っているけれど、木になっている状態で熟した梅で作ったほうが梅干しも甘くておいしいですね。

 

値段がすごく高い梅干しは、きっと木で熟したもので作ったりするんでしょうけど、色々添加物も入った甘ったるい感じになっていてもったいないですよね。私、調味梅干しが苦手なんです。

 

梅の実は大きいのも小さいのもあるしバラバラ。種が大きくて実が少ない、昔ながらの梅で、いろんな形と大きさがあって、でも別に気にせず、一緒に使ってます。販売されている実はだいたい品種改良とかもされているんでしょうね。

 

そういえば、竹林ってどんどん増殖するけど、梅の木ってそんなに増えない。梅の種が芽を出すには時間がかかるのかな。

 

シソは自生している感じで毎年できます。福岡の方言では「てんとうばえ」って言うんです。種が落ちて、毎年出来ているので、特に植えたりする訳ではないです。特に何もしないし、もちろん農薬も一切使わないので、出来はマチマチです。

 

―作り方を教えてください。

 

うちの梅干しは、焼酎と氷砂糖を使うんです。ちょっと梅酒の梅っぽいイメージはあるかも。梅酒と使う材料一緒だしね。

実家では、もともとは塩だけで作ってたんです。ただ、母が血圧が高くなって、塩分を気にし始めた頃に、誰かに教わったか、本で見たのか、今の焼酎と砂糖を使う作り方になりました。減塩目的にやってみたら美味しかったから続けていて、私もその味に慣れているので、砂糖を使うやり方で作っています。

 

実家では砂糖はグラニュー糖を使っていて、私はグラニュー糖と氷砂糖を半々くらいで作っています。梅のシロップ漬けで氷砂糖も使うのでそれを使っているというだけなんですが。まろやかだからパクパク食べれちゃう。子供たちも大好きで平気で5~6個ぐらい食べるんです。梅干しちょっとにご飯2杯とかって言うけど、うちはご飯ちょっとに梅いっぱい、みたいな割合で食べる。だから、逆日の丸でお弁当作ってやろうかとか考えちゃう。

 

土用干しは私は3~4日くらいだけど、実家では3日以上干している。ざるに広げるんだけど、古い一軒家だから、雨の時や夕方からは軒の下に入れておいて、また朝に外に出す、みたいな感じ。母は働いていて忙しいから、日曜から日曜までとか、普通に3日3晩以上干してますよ。干している時に外出していて雨で濡れたら、乾燥するまで置いておく(笑)

うちの梅干しはかなり大雑把だから。繊細なものじゃないの。

 

最後は梅酢に戻して、シソが育った時点で、塩でもんだシソを入れる。土用干しの後にシソを入れることが多いですね。土用干しの頃にはシソが収穫できる状態じゃないことが多いから。入れる時期、量はシソの出来具合によってです。シソができなければ入れないし、買ってまで入れないかなあ。

 

できあがった後は、私はガラス瓶に入れて流しの下に置いているけれど、実家は茶色い壷に入れて土間とか納屋に置いてます。

 

そういえば、日系アメリカ人の友達が、すっごいきちんとしている性格で、梅干しも梅の大きさにもこだわって、塩が1グラムも間違っちゃいけないくらいな勢いで作ってた。土用干しの時期にアメリカに里帰りしなきゃだったらしいんだけど、

『僕はこの時期に梅を干さなくてはなりません、でもアメリカに行かなくてはなりません。だから干してください』って託児所にお願いしていたよ(笑)

 

―いろんな梅干しがありますね(笑)

ところで、実家ではシソも野菜もたくさんできるんですよね。

 

実家は、兼業農家ってほどじゃないけど、代々の畑があるんです。たぶん軽く100年以上は昔から。母方の古い世代からずっと住んでいる家なんですけど、昔はほとんど自給自足じゃないですか、だから食べられる何かを植えようという感じで色々植えたんだと思う。梅の木も祖父母が植えたみたいです。母が働いてても梅干しを作っているのは梅があるからだと思う。ずっと昔からの習慣だからね。

 

実家には、さくらんぼに梅、見るための梅もあって、シソにみつば、みょうが、さんしょの木とか。それから、少し離れたところに畑があって、柿の木、桃の木、だいだい、栗の木…。畑にも野菜が色々あって、家で食べるのだから多少虫食いでもいいやって、農薬も化学肥料も使わずに作ってきて、私はそれを食べて育ってきた。だからその環境が自分にとって普通なんです。今も実家で採れた野菜を送ってくれるのでそれを食べているんです。食べるものはとっても大事。買うとしても無農薬のがいい。でも、スーパーとかデパートとかで見ると高いし。実家で採れるものを買う気がしない(笑)

自然派なのかな。でも、こだわっているとかじゃなくて、自分が育ったのと同じようにしてたら、こうなる感じです。

田舎で暮らしていると、野菜がどんどん回ってくる。取れたら、もう家で食べるかあげるか、捨てるかしかないから、どんどんまわすの。ドサーっと来るんです。豊かですね。だから都会の人が田舎に憧れる気持ちはわかるけど、私はもういいかなって感じ(笑)

たまに帰るくらいでいいかな。子供の頃からなんとなく畑の世話もしてきたし。

 

―梅干し以外にも梅を使って何か作りますか?

 

梅蜜、梅味噌は作りますね。梅が余ってどうしようもないし(笑)

送ってきた梅は人にあげてはいるけど、あげられる人ってやっぱり限られるし、ひとりで引き取れる量って限りがあるし。

 

梅にはちみつを入れてシロップも作るんですけど、必ず発酵しちゃうんです。ちょっと酸味のある香りになるんですよ。なんでかなあ。早めに取り出して煮沸したほうがいいのかも。

 

主人の実家にも梅を送ってるんですけど、それを使って義母は梅の洗顔料も作っているんです。毛穴の汚れ、角質が取れる感じで肌がつるつるになるんですよ。女優さんが作っているらしいです。

作り方は、生梅を1~2時間水に漬けてアク抜きしてから、沸騰したお湯で梅が柔らかくなるまで茹でて、ザルに上げて、種を外してから裏ごし。裏ごしは目の粗いもので大丈夫。鍋で水分を飛ばしながら混ぜながらジャムみたいになるまで煮て、できあがりです。冷凍しておいたらいいみたい。梅は色々使えますね。

 

【美保さんちの梅干し】

まろやかで食べやすいのが特徴です。果肉もふっくら柔らかです。

梅干研究所では美保さんちで採れた梅を分けていただいて仕込みました。仕上がりが楽しみです。

 DSC01326

【美保さんちの梅干しレシピ】

「だいたいそのまま食べます。旦那さんが酸っぱいものが苦手なので、みんなが食べるものには梅干しは入れないです。旦那さんは梅干しもほとんど食べないですね。義母さんが作った梅ジャムはカレーに入れたり、料理に使うこともあります」

 

【美保さんちの梅干しの作り方メモ】

毎年1~^2キロ程度、ご実家では5~10キロ程度漬けるそうです。前年度の残り具合で漬ける量を調整しているのだとか。

 

分量)

梅1キロ

塩100グラム

グラニュー糖と氷砂糖で合わせて100グラム(割合は半々くらい)

焼酎50cc

シソは出来ただけ。

 

梅)

実家で採れた梅、シソを使用。

 

塩)

塩分濃度は10パーセント。

 

シソ)

適量の塩で塩もみ。

 

作り方)

1)梅を水洗い。梅が青い時は2時間ぐらい浸水、黄色くなりかけてたら1時間ぐらい浸水、熟れていたら水洗いのみ。

 

2)フキンなどで水気を拭き取る。

 

3)梅に焼酎をまぶしてから、塩、砂糖を入れて混ぜる。大きなボウルを使用。重しには水をビニール袋に入れたものを使用。

 

4)土用の頃に3~4日間くらい連続して晴れそうな時に土用干し。ザルに広げて干す。朝から干して、夜は雨の当たらない軒下に、朝はまた日なたに出すというのを3~4日間繰り返す。梅の表面が乾いていたら土用干し終了。家事などの都合上、昼間に取り込む。

 

 

5)しそを塩もみする。しそが実家から届く時期によるので、土用干ししている間に塩もみすることもあれば、土用干しより早く塩もみして冷蔵庫に保存しておくこともある。

 

6)土用干しした梅にシソを入れる。梅酢も一緒に保存。

 

【2013年4月取材】