2014/04/21
梅干しを漬ける人々~竹内生子さんの場合~
福岡県飯塚市で「みくりの」という羊羹屋さんを営む竹内生子(たけうちいくこ)さん。梅や小豆、チョコレート(!)などを使った手作り羊羹はどれも甘さが控えめですっきりした味わいです。実はかつては漬物屋さんでもあったこのお店。当時は多種類の漬物とともに梅干しも手作りしていたのだそうです。
-漬物屋さんの時はどんな風に作っていたんですか?
店のすぐそばの山に梅の木がたくさんあるのよ。最初のうちはその裏山の梅を採ってきてやっていたこともあったけど、味がどうもいまひとつで(笑)それから南高梅を買って作るようになった。野菜屋さんの知り合いがいてね、その人から買ってた。
梅が段ボールで30~50箱くらいは届いてたね。すごい量よ。
塩はどれも粗塩。これもどさっとまとめて買ってたね。
塩分は10パーセントの減塩。塩の量はきっちり計る。
昔はね、自分で適当に漬けて、何でも目分量でね。床漬けとかも作ってたよ。
それで、(失敗しても)「ああ今年は腐りました」で良かったけど、売り物になるとそうはいかないから、キッチリ計ってやりますよ。味を一定にしなきゃいけないでしょ。同じように作っても同じにならないからね。大変だったね。
梅が届いたら、まずは水に漬けて、それからホワイトリカーで1個1個洗ってね、拭いて。ヘタはまあ取れる範囲で取って。重しは1.3倍くらいの重さかな。普通よりだいぶん軽いでしょ。重すぎてもつぶれるからね。その重しで1週間くらいかな、様子見ながらね。
このあたりはシソの時期が少しずれるのよ。
だからシソを買ったら、塩もみして梅酢に漬けとくのよ。
この時の梅酢は何でもいいの。適当に余ったような梅を漬けてできたものにシソを入れとくの。
それから、塩漬けしておいた梅が頃合になったらシソを入れて、漬け直す。これでできあがり。干さないの。梅漬けね。南高梅は粒が大きいし、やっぱりおいしくできる。
漬け物にする野菜も買ってたけど、たまには川原にいって、いろんなのを摘んでブレンドしたのがおいしかったね。「からし菜」って私らは呼んでたけど。小松菜系のとか色々入れてね。シャキシャキしてて。
-漬物屋さんから羊羹屋さんになったのはなぜですか?
昔は友達の漬物屋を手伝ったりもしてたからね。それから漬物屋を自分でするようになってね。昔は3割塩って言ったものだけどね。梅でも何でも、漬物は全部ね。
今は何でも減塩だからね。
漬物屋は7年くらいやったかな。それから羊羹を始めて、2年間くらいは羊羹と漬物の両方やってて、羊羹だけにしてからは3年目だね。
お父さん(ご主人)がずっと和菓子屋で職人をしてたからね。作り方を教えてもらって、お父さんと娘と一緒にやってます。
(梅干し作りは)今は適当よ。漬ける量も1~2キロかな。ちょっと梅を買ってきて、家で食べる分を作るだけ。塩もそう。スーパーで適当なの買ってきて作る。羊羹作るので忙しいからね。
-商品に梅の羊羹もありますよね。
梅の羊羹は、まず梅ジャムを作って、シソジュースを入れて、作っている。レモンとね。入れると味が安定するのよ。うちのはわりと甘さ控えめだから食べやすいと思うよ。
羊羹も梅の羊羹は作っているけど、自分で摘んだりまでは難しい。忙しくてね。時間がない。だから買ってきて作ってる。
羊羹はいいね。保存がきくからロスになるものが少ない(笑)
漬物は結構売れてたけど、野菜の値段がよく上がるでしょう。高騰するとなかなか大変。どうしても売れ残りもできるしね。結構難しかった。
うちの羊羹は、道の駅いとだ「おじゅごんち」(福岡県田川郡糸田町)とか直方の「なのはな畑」(福岡県直方市)にある。ネットでも買えるよ。
羊羹も忙しいね。羊羹練って、箱に詰めて、配達して。毎日バタバタしてる。
私はね、生まれは大阪で北九州で育った。直方に40年くらい住んで、飯塚に来ました。
ずっと町中で暮らしてたから、最初は山とかにもなかなか慣れなくてね。
ええといくつになったかな、70歳だ。孫は6人いて、昔は梅の木がある裏山で、よう遊び回ってた。まあ小さい頃はみんな言うこと聞かないで困ったけどね。怒って包丁を振り上げたら、子供たちに笑われてね。もちろん振り下ろしてはいないよ。そんなこともあったね。本当に聞かなくって。まあ何でもかんでも大人の言う通りにしているのも困るんだけど。
まあでもみんな大きくなって。みんな優しい子に育ったから良かったね。
お店のすぐそばの梅林
【竹内さんちの梅干しの作り方】
分量)
梅1キロに対して、塩100グラム、シソ1束(200g程度、シソをもむ塩はシソの重量の30パーセント)
梅)
八百屋さんにて南高梅を購入。
塩)
粗塩を使用。
シソ)
八百屋さんにて購入。
作り方)
1)梅は洗って水に漬ける。
2)水気をふき取ってからホワイトリカーでひとつひとつ洗う。
3)水分を取って、ヘタを取る。
4)塩に漬け込む。重しは1.3倍。
5)シソの塩もみをして、適当な梅酢に漬けておく。
6)梅酢の上がりが頃合になったら、シソを加える。
竹内さんちの梅干しは、さっぱりフレッシュ、梅とシソの香りが生きています。
お茶請けにしたいスッキリとした味。美しくシソの色が染まっています。
みくりのの羊羹。ミニサイズもあるのがうれしい。全種類買ってきました!
竹内さんの娘さん。店頭にいらっしゃいます。
【2014年3月取材】