2013/12/04
梅干しを漬ける人々~小江泰子さんの場合~
福岡県大野城市にある南ヶ丘保育園の給食室で働く泰子さん。常に食を大切に暮らしてきた泰子さんは、給食室で最年長の先生であり、若い先生方の知恵袋的存在でもあります。常に動き回り、手を動かし、お話していると食のアイデアも次から次へと飛び出してきます。
―梅干しはもうずっと漬けているんですか?
もう40年くらいは漬けてるわね。毎年10キロ前後、今年は20キロ漬けました。庭に梅の木があって、大きい実が採れるんです。今年は10キロくらい採れました。今年はいつもより梅の実ができるのが早いみたいだね。でも、梅の木が少々疲れていて、毎年採れることはないので、採れない時は知人、お友達にいただきます。
シソは畑で2~3キロは採れますね。足りない分は知人やお友達からいただきます。シソの出来も年によって違うね。梅がよく採れる年はシソがあまりできなかったりするのよね。
梅を摘んだら、痛んでいたり、カビが生えていたりするのは分けて。色が変わって柔らかくなっているところはあっても、手で押さえて、ぶよってならない感じなら大丈夫。あとは匂いね。熟した匂いならいいけど、そうじゃなかったら別にして、そういうのはまとめて別に漬けたほうがいいみたい。あんまり青いのもシワシワになるね。
塩分は今は10パーセント。数年前までは20パーセントにしてたけど、最近は塩分を控えめにしています。シソは梅1キロに対してシソ300グラム、シソの塩もみは50グラムです。
―失敗はありますか?
あるね。40年漬けていてもカビが生える時はある。なんで生えるかわからんね。同じようにしてても生える時がある。空気にふれたりするとダメだし。まったくもって難しいです。毎年違う。
シソもしっかり塩でもんでおかないといい色が出ない。シソも種類がいろいろあるでしょう。赤いのとか青いのとかあるけど、赤いのを使っても色が付かないこともある。パラパラっとなるくらいまでしっかりアクを絞らないとダメだね。それでも色が出ないものもあるし、いっぱい入れても色が付かない時もある。量じゃないのよね。
―梅はお料理にも使いますか?
使いますね。家での料理には何にでも使いますよ。梅の実は料理に使って、種は梅醤番茶にしたり。硬めの梅だったら刻んで、ひじきと混ぜたりします。あとは、野菜でもかつおぶしでも、何でも細かく切って梅の味を入れて、ご飯に混ぜておにぎりにしたり。私は何でも刻むのよ。フードプロセッサーとかは使わないのね。
それから梅干しとお魚を煮たりしますでしょ。あとは、梅とかつお節でフキの葉っぱと煮たりとかね。硬い梅だったら焼酎をかけて柔らかくしとくの。フキの茎は炊いたりするでしょ、だから残った葉っぱを佃煮にしたり、納豆にも入れたり。
梅酢はお寿司とかお味噌に入れる。酢味噌和えにする時に、梅酢を入れたりする。暑い季節の時には普通の酢じゃなくて、梅酢を使う。古くなったらっきょに梅酢とオイル入れてドレッシングにもする。らっきょって甘味もとんがらしも、もう何でも入ってるでしょ。
塩麹を作っておいて、漬け込む前に梅やシソを刻んだりしたのを入れて、梅麹にして、それにお魚を漬け込んで焼いたらいいの。お肉でもいいわね。風味があっておいしい。これは梅よりシソの葉っぱがおいしいの。山椒を入れたりもするわね。山椒はぬか漬けに入れたりもする。庭で採れたものよ。自分の目に見えるとこのが安心なのよね。普段暮らしているところでとれるのが一番身体に合うよね。
かっぱ巻きみたいなのもおいしいよね。
私はお味噌が好きなのね。麺類とかぶっかけみたいにして、それに味噌や梅を入れたりね。
―アイデアはどんどん出てきますね。
私は昔の料理しかわからないけどね、メリケン粉にお塩入れといて、クレープみたいな感じにしといて、その中にお味噌とか梅とか入れといて、四つ折にして焼いたら、それもいいと思う。
お野菜でもたくあんでも小松菜でもネギでも高菜でもいいし、粉の中に入れて、お焼きじゃないけど、そういうのいいね。梅とゴマと入れて。
梅はなんでもいけますね。パスタにオリーブオイル入れて、豆乳のクリームにして、トマトや味噌、梅を入れて。五島うどんみたいなおそうめんでもないし、うどんでもないような麺が合いそう。
―シソも色々使うんですよね。
シソもシソジュースを作って、ジュースを漉した後のシソは、佃煮にしたりする。もったいないから。刻んでコブとか入れて煮る。
梅干しのシソは、ゆかりにしたり、シソごはんにしたり。大根の葉や人参の葉を乾燥させてゆかりに混ぜたりして、ふりかけにしたり。
私は食べ物は肉が嫌い、牛乳が嫌い、チーズが嫌い、バターが嫌い、ピーナッツバターなんていうのも嫌い、お野菜があればいいって人だから、なんでも自分で作るの。お醤油、お塩はいいのを使う。らっきょ漬けから粕漬けから、何でも作っている。私はね、添加物とかも好きじゃなくてね、よそで食べると食べれなくてね。だから自分で作ったのがいい。
わらびとかね、ふきだとかね、タラとかもね、自分で採りにいってるの。自然のが好きです。苺を採ってきてジャム作ったり、ウド採って漬けたり。栗ひらい(拾い)に行ったり、むかごを採ったり。給食室の先生方とも一緒に行くのよ。
あと、サワガニを獲ってですね、揚げたり。
塩と唐辛子でガニ漬けというのは知らないでしょ? 私、佐賀出身だからガニ漬けを昔から食べてるの。
サワガニを獲ってね、もういっぱい獲って、まあ逃げますけど、生きたままじゃないとダメなの、死んじゃったらダメ。そのサワガニを大きなすりばちに入れてね、塩とね、とんがらしとね、胡椒と入れて、摺るんです。グズグズになるまで。これが保存食というか、お茶漬けにしたり、田舎の食べ物ね。塩辛みたいな感じ。ただサワガニは家の中でもどこでも這い回るから、一匹でも残ってたら大変(笑)
―楽しそうですね。
そういう手作りの文化は伝えていきたいですよね。
そうなの。私、考えました。梅干しはね、わざわざツボを買わないと作れないってのじゃなくて、ビニール袋にお塩を入れて、ぽにょぽにょってしといて、何でもいいから、重しにして。重しもわざわざ買わないくていいから、ペットボトルでも雑誌でもいいの。で、梅酢が出てきたら、最終的には容器に入れて、できればプラスティックじゃないやつね。
道具は買わないとダメってのはないし、買って使わなくなったらもったいないじゃない? 若い人にそれを教えないとよね。何をするでもそう。革命というか、考えの変換というかね。若い人にこそ梅干しは作ってほしい。子供の面倒を見ながら、ちょっと子供が寝てる間に作れるからね。
梅干しは親が食べないと子供も食べないってなるけど、家で作ったらおいしいからやっぱり食べるのね。子供も最初は食べないけど、少しずつ慣れたら食べれる。最初は細かく刻んでご飯に混ぜるのね。そうやって慣らしていくといいわよ。保育園の子供たちもね、最初は梅干しが苦手でも、この園では1歳児から自分たちで梅干し作りをするのよ。自分で作ったらおいしいからね、すぐに好きになるのよ。
【泰子さんの梅干しの作り方メモ】
分量)
梅1キロに対して、塩100グラム、シソ300g(シソをもむ塩は別に50g)
梅)
庭の梅、もしくは頂き物を使用。
塩)
大分の「なずなの塩」を使用。
シソ)
畑で採れるシソを使用。もしくは頂き物を使用。シソの重量の16~17パーセントの塩で塩もみ
作り方)
*容器は洗って、熱湯消毒、それから焼酎で消毒しておく。
1)梅は洗って水に漬ける。
2)ヘタを取って、水気を拭き取る。
3)壷に梅と塩を順に重ねて入れて塩漬け
4)梅酢が上がったら、シソを加える。シソがまだ出来なければ、先に土用干し。3日3晩干す。
「先に土用干しする時はシソを塩もみしてから白梅酢に漬けておいて後から入れます。このほうがよく染み込むし、色付きもいいみたい」
【2013年5月取材】